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〜 随 筆 〜
 中国大陸初の日本式クリニック 

   出典:神奈川県医師会報(1997年)より

日本を離れ海外で活躍する日本人の医療問題が深刻であることから、日本在外邦人の医療事情を少しでも緩和しようと、外務省、厚生省、労働省の支援を受け設立されたのが、海外邦人医療基金である。私はその設立準備の段階からお手伝いをし、運営委員として13年が経った。

この度、シンガポール、ジャカルタ、マニラなどに次いで、中国大連市に在留邦人のための日本式クリニックを開設する運びとなり、その開院式のミッションの1人として参加した。団長は歌田勝弘会長、日本企業を代表する経団連の要人である。

大連市は、遼東半島の南端にあり、人口530万人の中国東北部最大の都市である。ここに在留する邦人は約4000人。家族同伴も増え、日本人学校も1994年に開設。日本企業の進出に伴い、将来もっと日本人が増えると予想されている。市内には、旧満鉄病院、旧日本赤十字病院が、それぞれ鉄路医院(中国では病院のことを医院という)第一医科医院として盛業中であった。

中国の医療制度は、国民皆保険ではなく労働職別の保険制度で、それ以外の人は、自費診療となる。外人の場合、中国の会社に勤務する者以外はすべて自費で、外国人の医療費は例外になく高額である。

一般に受付で有料のカルテを作成、それを本人が持ち、診療を受け、終了すると、又本人がカルテを保管するシステムになっている。次の受診の時、そのカルテを持参しないと、又、受付でお金を払うことになる。入院時には高額の保証金(デポジット)を先に払い、退院の時、差額を精算するシステムになっている。なお、薬、検査も分業のため、日本人はこの中国式医療制度を理解出来ないし、現実の問題として、混雑する病院では、スムーズに受診出来ないのが大きな問題となっている。

参考のために、中国での医療状況を表1にあらわした。国民医療費2兆4000億円で、薬剤費のしめる割合が約50%と極めて高い。医療、薬剤師の数は、表の通り少ないが都市部に集中している。病院はすべて国営で、日本のような民営の医療機関はない。ただし、針、灸、漢方などの私営のミニクリニックが存在する。医療保険加入者が少ないため、日本のような開業医はいない。中国での疾病の構造は表2の通りで、高血圧に伴う脳血管障害の病気で死ぬ人が多い。

この度、基金が大連日本商工クラブを支援し、700床の大連中心病院内に日本式クリニックを開設した。日本人医師を派遣し、日本語の堪能な看護婦と受付事務を配し、心電図、超音波を装備して、ミニ薬局を備えた独立したクリニックである。なお、院内にあるMRI,CTなどの高度医療機器も利用出来るため、プライマリーケアばかりでなく、高度医療も中国人医師の常駐により、大連在留邦人の医療不安は、ほとんどなくなったと言ってもよい。今後は、大連市周辺に在留する邦人には、テレビ電話及びインターネットで遠隔医療を展開すべく検討中である。

開院式には、7月16日、医院の前の広場で音楽隊に迎えられ、中国式に始まった。日本人関係者40人、中国側40人が列席。大連市長、共産党書記長など中国人要人も参加し、盛大な式となった。
中国の要人との交渉に4年間を費やしたが、アカシヤの街、風光明媚な美しい大連で、私が発案し企画した、中国での医療の展開がこんな形で実現したことは誠にうれしい。


 
表1 中国の医療状況
総人口 約12億人
医療費 1,700億元(2兆4千億円/日本円)
薬剤費 1,100億元(1兆5千億円/日本円)
医師数 188万人(西洋医:151万人、中医:37万人)
薬剤師数 34万人(西洋薬剤師:21万人、漢方薬剤師:13万人)
病院数 6万8,000軒
医療保険加入者数 1億6千万人(総人口の約13%)

公費医療保険(公務員、国営企業職員等)
労働医療保険(合併企業等)
表2  中国の疾病状況
◆患疾別死亡順位

1. 脳血管系  22.1%
2. 悪性腫瘍  21.8%
3. 呼吸器系  16.0%
4. 心疾患   15.0%
5. 外傷、中毒  6.7%
6. 消化器系   3.6%

◆疾患別有病率順位

1. 消化器系  16.2%
2. 呼吸器系  15.8%
3. 損傷、中毒 13.8%
4. 循環器系  11.0%
5. 癌      8.1%


代表医:大利 昌久


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