ホームSARSについて新型肺炎SARS
 海外へ出発する前に
 海外旅行の問題点
 海外赴任者の問題点
 海外で暮らすには
 海外医療の舞台裏
 話題の感染症
 SARSについて
 マラリアは最大の敵
 生物兵器
 特別寄稿読売新聞
 特別寄稿神奈川新聞
 患者さんに対して
 ドクター随筆
 現代日本の寄生虫症
 日本臨床内科医会
 日本渡航医学会NEW
 さえぐさ医院NEW
 アフリカ紀行展
 スマトラ沖地震救援

重症急性呼吸器症候群(SARS)について

新型肺炎SARS

時代背景
 この10年間に新しい感染症が続々、登場した。最近では、1998年のマレーシアでの「ニパ・ウイルス脳炎」、1999年の「西ナイル脳炎」、2002年の「新型アレナウイルス感染」などウイルス病の猛威が続いた。
 人から人に感染する「ニパ・ウイルス」は、すぐに姿を消したが、「西ナイル脳炎」は、その媒介蚊が日本にいるため、日本上陸も間近といわれ、その検疫強化が言われていた矢先の「新型肺炎」の登場となった。
 新型肺炎は、複数の国・地域で発生。人の動きと深い関連がある点で注目される。
肺炎のはじまり
 2002年11月16日、広東省仏山市で新しい「謎の肺炎」が発生した。インフルエンザのような症状で始まり、抗生物質が効かないで、重症化する点が問題となっていた。2003年1月下旬に広東省の大都市広州市でも流行が始まり、2月上中旬にピークをむかえた。2月末までに広東省における新しい肺炎は680人。このうち24人が死亡した。当初、中国衛生局は、「クラミジア肺炎」と発表した。しかしこの肺炎は、広東省にとどまることなく香港など周辺地域だけでなく、4月に入ると、6大陸に飛び、公衆衛生学上、大きな問題となった。

WHOは3月初め、重傷急性呼吸器症候群(SARS)と名付け、本格的な調査に入り、世界的な「注意喚起」を呼びかけ、3月15日、広東省・香港への「渡航自粛勧告」を出した。
 日本でも、4月3日、「新感染症」とし、コロナウイルスが特定されたことから、4月16日、「指定感染症」に変更し、検疫強化をはかった。

SARSの登場
 3月初め、新しい発症件数は著しく低下する一方で、治癒した患者数も増加。約75%が治癒して退院した。季節的にみてSARSと言われた肺炎の中に、一般の肺炎も30%位は含まれていたと思われる。
 WHOの専門家は、『この病気は、近距離の「飛沫感染」が原因で、感染者との密接な接触があって初めて感染することから、大きな流行となる可能性は比較的少ない』と述べた。

世界的な拡大
 入院患者を通し多くの医療関係者に感染したこと。香港のアモイガーデン(マンション)内で、感染者が大勢出たことなど、公衆衛生上の問題は大きい。感染者は、2003年2月以降に香港・ベトナム・カナダなどに急激に拡大した。鍵は「香港のホテル内感染」だった。
 2月21日、広東省広州市の大学教授が香港のホテルに宿泊。同じフロアの複数の宿泊客に感染が広がった。その1人の米国人男性は、2月23日、ハノイで発病して同市内で入院。この人を通じ、院内の医療関係者に感染した。同じホテルの客だったカナダ人女性はトロントで発病し、家族や医療従事者に拡大。さらに所属する宗教団体関係者に患者が続出した。
 各地で同時に多くの人が発病したのではなく、感染者が航空機で世界各地に移動し、そこから地域内で感染が広まったのが特徴。特定の感染者が多くの人に感染されていることも考えられ、「スーパー・スプレッダー」現象と注目されている。

病原体
 最初、「クラミジア説」が出、次いで「ミクソウイルス説」が流れた。しかし、サルへの動物実験により、コロナウイルス説が有力となった。コロナウイルスは、もともと豚の感染性胃腸炎、鳥の気管支炎などを引き起こす。
感染経路
 飛沫感染が主。入院患者をみていた医師・看護師らの院内感染があり、中国本土から、カナダ・アメリカ・オーストラリアなどに感染が飛び火。香港でのアモイガーデン(高層マンション)内の集団感染。飛行機に乗り合わせた場合の機内感染、自宅での家族感染など多様なため、空気感染・接触感染も完全に否定された訳ではない(4月28日現在)。

SARSの定義
○ 疑い例
1) 38℃以上の急激な発熱
2) 咳、呼吸困難などの呼吸器症状
3) SARSの発生が報告されている地域へ旅行したもの
4) SARSの症例を看護・介護するか、同居しているか、患者の気道分泌物や体液に触れたもの
★ 1)、2)の症状を呈し、かつ3)、4)のいずれかを満たすもの
○ 可能性例
疑い例であり、胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者。または、原因不明の呼吸器疾患で死亡し、剖検で呼吸窮迫症候群の病理学的所見を示した者。

[SARSの臨床症状]
 急激な発熱とその後に続く呼吸器症状、頭痛、筋肉痛、筋硬直、食欲不振、意識混濁、発疹、下痢等

[SARSの検査所見]
  初期(発病3、4日)には、血小板減少症(7万以下)、白血球減少症(4,000以下)、胸部レントゲン写真上の肺炎像

[SARSの治療]
  現在有効な治療法はなく、呼吸器装着等の対症療法が主体

[報告手順]
  医療機関から最寄の保健所へ直ちに報告(夜間・休日の場合は、直近の開庁日に報告)

SARSへの対応
 「SARSの疑い」「可能性」の患者発生時の医療側の対応が決められた。

有病者が、一般の外来を受診した場合の対応は、以下の通り。

1.受付の際に、「疑い例」「可能性例」の把握に努める。(受付担当者への周知)

2.当該患者にマスクをする。(外科用マスクでよい)

3.当該患者を可能な限り、隔離する。

4.直ちに保健所に連絡をとり、検体採取、専門医療機関への搬送等対応を依頼する。

 血液検査、レントゲン撮影等を含む診療行為に関しては、医師の判断によるが、保健所と十分協議の上、適切な対応をとるよう配慮する。なお、患者と接触した器材については、アルコール消毒が有効とされる。

SARS管理
 海外で発病したら、現地での指定医療機関に入院するのが原則。検疫強化により、体温を測られるので、これまでの書類申告では済まされなくなったので無理。「発病拡大」を防止するには、発病したら「病原体封じ込め」対策に協力することが大切。
 流行情報が入ったら、早めに帰国する方が良い。また、感染の機会があったら、帰国して7〜10日間は、自分自身を家族・企業から隔離することが必要とされている。
 基本的な予防対策、手洗い・うがい・マスクなどを励行することが必要。


代表医:大利 昌久


Copyright (C) 2005 Dr Oori.