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対談:現代日本の寄生虫症 
〜国際化の時代のなかでその対策を考える〜

東京慈恵会医科大学
寄生虫学教授
大友弘士先生
横浜市立大学
医学部寄生虫学助教授
天野皓昭先生
おおり医院院長
海外邦人医療基金運営委員
大利昌久先生
<司会>
北里大学
医学部寄生虫学教授
伊藤洋一先生


イヌやネコからも移る恐ろしいペット病
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伊 藤:
最近はペットブームですが、ペットから感染する寄生虫症も増えていますね。
この病気は多岐に亘りますので、今回は「イヌ蛔虫症」(ネコ蛔虫症)と「トキソプラズマ症」ぐらいに絞ってお話し願いたいと思います。
イヌ蛔虫症は「幼虫内臓移行症」などとも言いますが、これはイヌやネコに寄生する蛔虫の成熟卵が体内で孵化して、成虫にならないまま幼虫の形で臓器に移行するので、その名前がありますね。

天 野:
イヌ蛔虫症は最近の社会問題ともなっており、地方自治体なども公園の砂場の管理方法に関して、対応を迫られているようです。
そこで、砂場の砂を調べてみますと、イヌやネコの蛔虫卵がかなりの高頻度で発見されています。
私どもの病院でも昨年イヌ蛔虫症により脳脊髄膜炎を起こした症例が1例あります。
実際にどういう場でイヌやネコの蛔虫卵が経口摂取されて感染が成立するのかを特定することはなかなか難しいですね。
しかし、一般的にはこれら動物を飼育している人は、動物の駆虫をちゃんとやる義務がありますね。

大 友:
しかし、イヌ蛔虫症やネコ蛔虫症がヒトに悪さをすることは確かですね。

その幼虫は臓器の中でも肝臓に移行するケースが圧倒的に多いわけですが、まれに眼や肺に入り込むことがあるので怖いですね。
アメリカでは小児失明の原因になったり、網膜の腫瘍と判断され、摘出された眼球の中に幼虫寄生が認められた例がこの疾患が注目され始めた頃はかなり報告されていますね。

伊 藤:
患者さんは子どもに多いといわれていますが、最近は大人にも多いですね。
うちの病院でも抗体価が高くてイヌ蛔虫症の確定診断を出したものが3例ありますが、そのケースを見ると27歳の男性はブドウ膜炎の疑い、35歳の男性は発熱と全身倦怠があって好酸球性の髄膜炎、42歳の女性でも、ブドウ膜炎という形で、イヌ蛔虫症は大人にもあるわけです。

天 野:
私どもも非常によく似た症例を経験しています。
眼科の先生にイヌ蛔虫症を疑ってくださる方がいると相談がぐんと増えるのですが、眼炎患者の中にも結構、イヌ蛔虫症の人が多いのではないかと思います。

伊 藤:
私たちはある市の公園の砂場を調べたことがありますが、ちょっと見ただけでも4ケ所で蛔虫卵を見つけています。
そして、きちんと調べれば、100%出るのではないかとの話も聞きました。
公園の砂場で子どもを遊ばせることはかなり危険ですね。

天 野:
イヌの飼い主の知識欠如が問題でして、平気で公園の砂場にイヌを連れて来るという生活習慣は改めるべきですね。
ヨーロッパではイヌを公園に入れてはいけないという所があり、そういう国では逆にイヌを遊ばせる専用の公園というのもありますね。
これには狂犬病対策の意味もありますが、、、。

伊 藤:
それから、トキソプラズマ原虫の感染から起こる「トキソプラズマ症」もありますね。
すでにご存じのように、この病気は妊娠中の女性に初感染すると流産、死産が起きやすく、たとえ生まれても小頭症などの形態異常児が生まれる危険があるわけですが、これに関してはいかがでしょうか。

大 友:
最近はエイズその他の「免疫不全症候群」の日和見感染などもあり、免疫抑制療法が普及し、それが危険因子にもなっていますね。
こうした医療の発達とエイズの台頭がトキソプラズマによる壊死性脳炎という特異な病態が注目されるようにもなり、エイズ患者の多いアメリカなどでは、その医療対策が重要な問題になっているようですね。

天 野:
日本では、トキソプラズマの抗体陽性率は諸外国に比べて低く、10〜15%ぐらいの陽性率だと思いますね。                

大 友:
加齢とともに陽性率が高くなりますが平均的に10%くらいと思います。
ただ、幸いなことに妊婦の初感染以外、すなわち健康な成人の後天的感染の場合は不顕性感染のまま終わるので、ほとんど危険性がないということですね。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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