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グルメブームで増えた最近の寄生虫事情
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対談:現代日本の寄生虫症
〜国際化の時代のなかでその対策を考える〜
東京慈恵会医科大学
寄生虫学教授
大友弘士先生
横浜市立大学
医学部寄生虫学助教授
天野皓昭先生
おおり医院院長
海外邦人医療基金運営委員
大利昌久先生
<司会>
北里大学
医学部寄生虫学教授
伊藤洋一先生
グルメブームで増えた最近の寄生虫事情
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伊 藤:
ここで話題を大きく変えますが、最近のグルメブームの中で、一般の人がいろいろ変わったものを食べるので、ここでもさまざま珍しい寄生虫症が起こっています。
珍しいものを求めての「ゲテモノ食い」だけでなく、安全と見られがちな無農薬野菜や自然食品でかかる場合さえあります。
そこで、次はグルメから起こる寄生虫症についてお話いただけませんか。
天 野:
私共の教室には、例年5月の連休明けから夏休み前まで「広節裂頭条虫症」の患者さんが医療機関からの紹介でみえますが、この寄生虫は従来マス寿司に使う新鮮なサクラマスから感染した人が大部分でした。
ところが、最近「決してマス寿司をたべなかった」という人の中からも、広節裂頭条虫症の患者さんが出ています。
詳細に、摂取した魚類を聞いてみますと、この人たちはカナダ産のキングサーモンを食べたりしているわけで、これなどまさに最近の「グルメブーム」から起きた新しい症例だと思います。
大 友:
「マス寿司」冤罪説ですね(笑い)。
それから広節裂頭条虫症は北海道産のサクラマスも怪しいという説もあります。
かつては、お金持ちだけが食べる珍味だった食品が、最近は流通網が整備され庶民の食卓に載るようになって、それで患者の発生の広域化しているわけです。
広節裂頭条虫症はいわゆる「サナダムシ」ですが、このところ確かに増えていきていますね。
伊 藤:
うちの病院でも広節裂頭条虫症は、年間10例以上ありますね。
大 友:
それで、臨床の先生方も最近は、珍しがらなくなりましたね(笑い)。
治療では「ビチン」が販売停止になりましたが、「プラジカンテル」がありますね。
また、保健適用外の薬ですが、「アミノサイジン」がよく効きます。これは再発率が極めて低いですね。
天 野:
最近臨床の先生の間で、腸管造影剤の「ガストログラフィン」を使用した広節裂頭条虫症の治療が流行っています。
レントゲンテレビ透視下で条虫の虫体が紐状に見えるのでおもしろいようですね。
大 友:
とにかく、日常食品からの感染がこわいですね。
伊 藤:
自然食品も大流行ですが、中国、フィリピン、極東などで作った野菜が飛行機にのって日本に直輸入されて、これがそのまま食卓にのると、それが寄生虫汚染されていて、感染してしまうこともあります。
それから「蟯虫」など日本に昔からある寄生虫症も多少残っているようですね。
あと多いのはサバ・アジ・カツオ・タラなどを生食した場合、数時間後に胃潰瘍などと間違うような激しい腹痛を起こすことがあるアニサキス幼虫による「アニキサス症」がありますね。
大 友:
これは、ある有名な俳優が楽屋でサバ寿司を食べて発症し、緊急手術を受けたことから一躍脚光を浴びましたが、このアニキサス症は年間、3000例以上あるといわれ、類似疾患のシュードテラノバ症も増えていると思います。
天 野:
去年の学生実習で、九州の日本海で捕獲したマサバのアニキサスの感染状況を調べさせたところ、アニキサスI型3期幼虫が1尾から平均300匹も出てきて驚きました。
伊 藤:
私の出身大学の同窓会誌に報告された話しですが、北海道にも多いようで、「1日に1〜2例のアニキサス症患者を診る」という話しがありました。
一 同:
ほう、それは凄いですね。
伊 藤:
とにかく北海道には多いみたいですね。
サバとかタラとか海産魚類が豊富なので、北海道は別な形で感染が起こっているのかもしれません。
天 野:
それから最近はコイワシの刺身を食べて感染したと思われるのですが、「大複殖門虫症」があります。
それに日本の牛・豚肉は安全なのですが、海外では牛肉から感染する無鉤条虫症や、豚肉から感染する有鉤条虫も忘れてはならない条虫症ですね。
大 友:
症状が軽いのであまり問題にならないのですが、全国的に増えているものでは「横川吸虫症」がありますね。これは、アユ寿司、アユの塩焼きなどから感染しており、やはり患者発生が広域化しているようです。
伊 藤:
ある河川のアユを調べてみますと、年度にもよりますが10〜20%ぐらいのアユが、その横川虫症に感染していますね。年によっては60%ということもありました。これは、どこからか持ってきた放流アユだったようですが、、、、。
大 友:
アユの値段は高い天然ものに吸虫がいることが多く、安い養殖ものには反っていないですね(笑い)。
天 野:
ただ、横川吸虫は寿命が短くて、たくさんの吸虫に感染しなければ、ほとんど自覚症状なしに経過しているのが多いですね。
大 友:
最近のニューフェースとしては、ホタルイカから感染する「旋尾線虫症」がありますね。このイカの出荷期に患者発生がみられています。
それから最近はゲテモノ食いが流行っていますが、クマ肉の生やルイベを食べた人から「旋尾線虫症」の集団発生が3件あるほか、強壮剤としてナメクジを飲んだ人に好酸球性髄膜炎を起こす「広東住血虫症」、ヘビの生き血や刺身の摂取による「マンソン孤虫症」も起こっています。
そういうわけで、常軌を逸した非日常的なゲテモノ食いは絶対止めたほうがいいと思います。
最近のネオン街では、輸入したドジョウの稚魚をワインに入れて一気飲みする「ドジョウの踊り食い」などという変なものが流行っているそうですが、これも、不快な症状を起こす「剛棘顎口虫症」の原因になりますから絶対止めるべきです。
また、顎口症には主にライギョの生食によって感染する「有棘顎口虫症」もあり、その幼虫が皮膚や皮下組織に入ってミミズ腫れになったり、希に脳や眼に侵入して大変危険な症状を起こした例も知られております。
伊 藤:
ドジョウの場合は、中国や台湾からの輸入品が危ないと言いますね。
天 野:
それから忘れてならないものに、ウエステルマン肺吸虫症や宮崎肺吸虫症があります。
宴会で料理の飾りとして出されたサワガニを食べて感染した症例もあります。
大 利:
最近は輸入野菜、輸入フルーツなどからの蛔虫も多いので、安心できませんよ。
大 友:
東京都などが野菜の検査強化に乗り出していますが、有機農業ばやりで「蛔虫」がまたまた復活しつつあります。
とくに海外から輸入した有機野菜には蛔虫が多いようですが、寄生虫は強くて漬物にいる場合もあります。
有機農業の善し悪しは、個人の価値観も問題もあるので一様には言えませんが、日本人の食へのこどわりが寄生虫症の原因になっていることは確かです。
・わが国で新たに登場、または問題になっている主要寄生虫症・
分類
疾患名
感染源・感染要因
人畜共通
寄生虫症
アニキサス
シェードテラノバ症
広節裂頭条虫症
大複殖門条虫症
横川吸虫症
旋尾線虫症
犬蛔虫症
犬糸状虫症
糞線虫症
多包虫症
ウエステルマン肺吸虫症
宮崎肺吸虫症
旋毛虫症
顎口虫症
マンソン孤虫症
棘口吸虫症
フィリピン毛頭虫症
海産魚、スルメイカ
海産魚
主にサクラマス
主にイワシ類
アユなど
ホタルイカ
成熟卵
感染蚊の刺螫
感染幼虫の経皮感染、自家感染
虫卵
サワガニ、モズクガニ
サワガニ
熊肉、豚肉
主に淡水魚
ヘビ・カエルなど
ドジョウ
淡水魚?
日和見感染
寄生虫症
Pneumocystis carinii肺炎
トキソプラズマ症
クリプトスポリジウム症
糞線虫症
免疫能低下
免疫能低下
免疫能低下
免疫能低下
性感染症
アメーバ赤痢、ほか
異常性愛による嚢子摂取
輸入
寄生虫症
マラリア
アメーバ赤痢
各種リシューマニア症
各種トリパノソーマ症
条虫症(無鉤、有鉤条虫)
有鉤嚢虫症
各種住血吸虫症
各種糸状虫症
剛棘顎口症
ハマダラカの刺螫
嚢子摂取
サンチョウバエの刺螫
ツエツエバエ、サシガメの刺螫
感染牛肉、豚肉
虫卵摂取、自家感染
セルカリアの経皮感染
媒介昆虫の刺螫
輸入ドジョウ
その他の
寄生虫症
アカントアメーバ性角膜炎
不潔なコンタクトレンズの装着
代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ
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