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対談:現代日本の寄生虫症 
〜国際化の時代のなかでその対策を考える〜

東京慈恵会医科大学
寄生虫学教授
大友弘士先生
横浜市立大学
医学部寄生虫学助教授
天野皓昭先生
おおり医院院長
海外邦人医療基金運営委員
大利昌久先生
<司会>
北里大学
医学部寄生虫学教授
伊藤洋一先生


マラリア以外の病気ではランブル鞭毛虫症が重要
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伊 藤:
これまでのお話で、日本から海外へ赴任したり旅行したりする場合、「マラリア」が一番大きな問題であることがわかりましたが、マラリア以外の寄生虫症ではいかがですか。

大 友:
マラリア以外の原虫症で多いのは「ランブル鞭毛虫症」です。下痢が主症状の原虫疾患で世界中にありますが、とくにインド亜大陸からの帰国者に多く見られます。

ところが、この病気は臨床医の関心が低く、診断が付かないことがあり、実際の罹患者は相当な数にのぼると思います。
いずれにしても、熱帯病からの帰・入国者で抗生物質が効かない下痢患者を診たら、まずこの病気の可能性を考えるべきと思います。

逆に、注目されている割に少ないのは「アメーバー症」で、これは感染しても、むしろランブル鞭毛虫症を気をつけたいですね。

ランブル鞭毛虫症は、インド亜大陸中心の疾患ですが、先進国でも感染することがあります。
例えばアメリカのワシントンなどでも、1980年代に水道水から集団発生していますし、英国の水道水や旧ソ連時代にレニングラードでホテルのポットの水から感染したという報告もありますね。

また、極めて特殊なものですが、医療対応が非常に難しい「シャーガス病」や「アフリカ睡眠病」などのトリパノソーマ症の持ち込まれております。
それからリシューマニア症の「カラザール」が増えております。
「熱帯粘膜皮膚リシューマニア症」の散発的な輸入例が発生していますが、この辺になると熱帯医学に造詣の深い人でないと対応できません(笑い)。

天 野:
いま南米から日本に働きに来ている人が多いわけですが、この人たちを診察する場合、「シャーガス病」を注意する必要があると思います。
この病気は慢性期に心疾患を併発することが多いのですが、
それを単純に日本人の心疾患と同じようなものとして診断し、原疾患のシャーガス病を見逃がす例がこれから増えてくると思いますので注意したいですね。

伊 藤:
私も南米パラグァイや中米グアテマラで感染症基礎調査をしていますが、シャーガス病の現地データがばらばらで、実際にどの程度あるのか正確には不明ですが、抗体で調べるとこの病気はかなりありそうです。

それと「粘膜皮膚リシューマニア症」が多いですね。
例えばパラグァイでは、ある集落人口のうち3分の1以上の人が、この潰瘍を現在持っていますが、この人たちが出稼ぎで日本へどんどん来ていますから、彼らが、日本で治療を受けたとき、そんな病気の存在さえ知らない日本人医師がどんな治療をするのか大変気掛かりですね。

大 友:
そして、日本ではそういう病気の治療薬が市販されていないわけですから、ほんとうに困りますね。            
天 野:
「シャーガス病」を疑う場合の動機は、その患者さんの出身地でしょうか。                    
伊 藤:
そう、出身地でしょうね。                                         
大 利:
われわれ開業医も、最近は外国人患者をみる機会が増えてきていますが、その辺の知識が必要ですね。

大 友:
最初はやはり、そういう流行地から来た熱性患者で髄膜炎症状を伴ったり、心筋障害があればシャーガス病を疑うべきでしょうね。

病原診断は、専門家に依頼すれば、それほど難しいものではありません。

大 利:
少し前の数字ですが、ガーナにいる在留日本人の疫学調査でマラリアとジアルジア性下痢症(ランブル鞭毛虫症)を調べたのですが、ジアルジアは日本人の40%近くの人に検出されました。
またリベリア、ナイジェリアでもほとんど同じ数字で、症状は軽い場合と重い場合と、患者さんによって、非常に大きな差があります。

伊 藤:
パキスタンに行く商社マンが、現地に到着後1ケ月以内に必ずかかると言われる「カラチっ腹」という下痢症状がありますが、これも「ランブル鞭毛虫症」が主体です。

大 友:
熱帯熱に単身赴任する人は飲酒の機会が多いようですが、オン・ザ・ロックから感染する例もあります。
これは不潔な水で作った氷の中にこの原虫の嚢子が混入しているためで、ウイスキーのアルコールもこの嚢子には通用しないからです(笑い)。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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