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対談:現代日本の寄生虫症 
〜国際化の時代のなかでその対策を考える〜

東京慈恵会医科大学
寄生虫学教授
大友弘士先生
横浜市立大学
医学部寄生虫学助教授
天野皓昭先生
おおり医院院長
海外邦人医療基金運営委員
大利昌久先生
<司会>
北里大学
医学部寄生虫学教授
伊藤洋一先生


予防薬も予防知識もなく、日本人旅行者は竹槍精神
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伊 藤:
そういう重要な情報を知らないのは大きな問題ですが、そういう知識をどこで、どのように入手できるかということも大きな問題ですね。

天野先生は外科の分野から寄生虫学の分野に入られて、現在は横浜市立大学医学部で寄生虫学の助教授をしておられますが、先生はその辺のことをどうお考えですか。

天 野:
その情報伝達のことは全く同感ですね。海外に赴任する人を抱える企業・官庁・団体などは、そういう重要な情報や対処方法と適切にアドバイスできる人を配慮して、定期的に広報活動もやっていただきたいと思います。

私は昨年、国際協力事業団(JICA)の感染症調査でナイジェリアを訪れた時、在留邦人の医療相談会で話をする機会がありましたが、そこではマラリアの予防薬に関する質問が延々と出て、困ってしまうほどでした。
そこで痛切に感じたのは、海外勤務予定者やその家族に現地の生活環境やそこで見られる主要な疾患とそれらに対する対処法をアドバイスする適切な機関が日本には不足しているということでした。

その質問の中に「ハロファントリン」というマラリアの新薬を予防薬として服用しており、その安全性について質問された人がいましたが、そうした予防薬の服用なども大部分の人が自己判断で行い、十分な医学知識もないものですからマラリアの予防薬を途中で中断して発症し、死に至るというケースも多いようです。

大利先生はそういう例をたくさん経験されていると思いますが、外国で感染、発症して、死に至る日本人は結構いるのではないかと思います。海外から国内に戻って死亡した感染者の統計があると思いますが、海外で苦しみながら死んだ日本人の数は、結局、表面には出ないままですね。

大 利:
ナイジェリアで死亡した日本人の場合、すべて熱帯熱マラリアによるものでした。
ナイジェリアのマラリアは、96%が熱帯熱マラリアで、あとの4%が四日熱なんです。あそには港があるので漁船関係の日本人がだいぶ死んでいますが、その辺は資料に載りません。

昔のナイジェリアは欧米の植民地で、「白人の墓場」と言われてましたから、そこに行く欧米人は必ず抗マラリア剤を持っているのですが、日本人だけは予防薬も予防知識も持たずに「竹槍精神」で出かけるわけです。笑いごとではすまされません。

大 友:
日本では昔日の伝染病はすでにほとんど絶滅し、衛生状態の極めて良好な国内環境を保持しており、しかも内陸部に国境をもたない島国ですから、伝染病の脅威から解放されておりますが、海外に一歩出ると、寄生虫症や熱帯病が蔓延している国がたくさんあるわけです。

そういう流行状況に関する公的機関からの情報サービスが欠けております。WHOなども毎年、旅行者の疾病予防に関するガイドブックを出していますし、アメリカ合衆国のCDCなどもそれに類するものを出しています。

ところが「情報化時代」の日本では公的機関からそういう出版物が出てないんです。街の書店には海外旅行のガイドブックも溢れるほど並んでいますが、その中の寄生虫症に関する記事には、「マラリア予防にはワクチン接種をしていくこと」などというウソが堂々と書いてあるものもあります(笑い)。そんなマラリア予防ワクチンがあるのだったら、とっくにノーベル医学賞をもらっていますよ(笑い)。

そうしたデタラメで無節操な情報がいまの日本に流れており、そこにも問題があると思います。
そして、それをきちんとするには根本的には医学教育の拡充や専門家養成の問題もあるわけで、官民一体の対応が必要なのではないでしょうか。

日本人はこのように熱帯病についてほとんど無関心ですが、このままでは日本は世界から孤立してしまいます。

大 利:
日本の企業は最近の円高の関係もありまして、アフリカが少し減ってアジアに集中しています。

そして大企業だけでなく、中小企業の人たちの進出も目立っていますが、現地の伝染病や医療情報に関しては、労働省関係機関のマニュアルが最近ようやく取り上げるようになったばかりです。
・在留邦人の医療問題・
1予防医学の問題 ・予防医学の問題
・健康診断、人間ドッグなど
・健康教育の問題(特に熱帯病の教育)
・海外保険の検討
2治療医学の問題 ・持ち出し病(慢性病の管理の問題)
・現地で発症する病気
・持ち帰り病(寄生虫症を含む輸入感染症など)
3医療システムの問題 ・一般医療
・緊急医療(海外移送企画、広域医療圏)
学会シンポジウム(1990年日本小児科学会)/「発展途上国の医療問題」(大利昌久)より


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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