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話題の感染症(12) 

jomf news letter no.102
(海外邦人医療基金)
2002.7


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飲食物からの感染症(食品媒介感染症)

はじめに
 病原微生物が混在している飲食物から感染する病気(下痢や嘔吐を主症状)を「食品媒介感染症」(food-bome disease)という。代表的な「食中毒」はもちろん、コレラ、赤痢、腸チフス等もこの感染症に含まれる。
 感染症新法の「4類感染症」の中に含まれている「感染性胃腸炎」も「食品媒介感染症」である。「感染性胃腸炎」は、小児に多いことから、国に届け出が義務付けられている。もちろん、日常診療では、小児に限らず、大人にも多い。
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食品媒介感染症の分類

以下のように分類すると理解しやすい。

1.従来の伝染病予防法の対象疾患
コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスなどの「2類感染症」。
熱帯、亜熱帯地域からの「輸入感染症」としても問題となる。
2.食品衛生法が対象とする病原微生物
多数の細菌やウイルスが含まれる。
感染症新法では、「4類感染症」で問題になる「感染性胃腸炎」がこの分類に入る。
サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、病原大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター等の「集団食中毒事件」を起こす細菌が代表。
さらに、ウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、エルシニアエンテロコリティア、ビブリオ属菌、エロモナス属菌等の細菌も関与する。
それに、小型球形ウイルス(srsv)を代表する新しい未知のウイルスも含まれる。
3.上述以外の疾患
感染症新法の「4類感染症」に含まれるアメーバ赤痢、クリプトスポリジウム症、ジアルジア症等の原虫疾患や、リステリア、モノシトゲネス、仮性結核菌、連鎖球菌等による感染症。
4.特殊な感染症
最近、微生物ではないが、クロイツフェルトヤコブ病(原因物質プリオン)も、この食品媒介感染症の分類にいれたい。
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最近問題となった感染症
 本誌では、食品媒介感染症を分類し、特にこの数年、問題になった感染症にふれた。

1.腸管出血性大腸菌感染症(病原性大腸菌o157感染症)

 病原性大腸菌o157による感染症は、6年前の1996年夏、大阪府堺市をはじめ、日本各地で集団食中毒事例が発生、大きな社会問題となった。その後、堺市のような大きな食中毒事例は影を潜めたが、散発例は後を絶たず、毎年2,000〜4,000例の患者が報告されている。しかし、2001年の春、千葉県を中心に、比較的大きい集団事例が発生。ハム工場が出荷した牛肉のたたきなどの生肉製品が原因で、183人の患者が出た。

病原性大腸菌o157感染症では、10〜30%で溶血性尿毒症症候群(hus)や脳症を合併し、特に乳幼児や、小児、老齢者では死亡することがある。そのため、病原性大腸菌o157感染症は、食品媒介感染症の中でも極めて重要な疾患といえる。感染症新法では、「3類感染症」に指定され、その制御に食品を扱う職種への就業制限が必要とされている。
 病原性大腸菌o157感染症では、早期に発見し、感染早期にホスホマイシン投与を行えば、husの併発が明らかに減少するということがわかっている。

下痢患者、特に血便を訴える患者を診察した場合、生肉を食べたことがあるかどうか、尋ねることで、病原性大腸菌o157の感染を推定することが可能。特に、乳幼児や小児の場合、患者が生肉を食べていなくとも、家族からの二次感染を疑う必要がある。成人では、保菌者、すなわちo157に感染していても症状が出ない人もいるので、これら保菌者が二次感染源となる可能性が非常に高い。

 病原性大腸菌o157の汚染の大もとは、ウシの腸管である。o157は、ウシに病原性がほとんどないため、言うなれば健康なウシでもo157を保菌していると考えてよい。そのo157が製品としての牛肉を汚染し、大掛かりな流通機構を通して多くの患者の発生につながると考えられる。その他、飲料水、生牛乳、野菜から感染している。
 1996年の堺市の事例では、カイワレダイコンが原因であった。しかも米国から輸入したカイワレダイコンの種がo157に汚染されていたのだ。食材の国際的な流通が現在では常識になっているので、今後のo157の制御対策は、根本的に考え直す必要がある。

以下にに、o157感染症の重症合併症の予兆を示した。
重症合併症の予兆
1) 臨床症状 激しい腹痛、血便、高熱、乏尿意識レベルの変化
2) 検査異常 タンパク尿、血尿、白血球数増多血小板減少、血清ldh高値、尿中nag血中トロンボモジュリン高値

2.黄色ブドウ球菌食中毒
 2000年初夏、某乳業会社の牛乳の汚染によって10,000人を超える患者が大阪など近畿地方を中心に発生した。北海道の工場で生産した牛乳が原因で、生産ラインが停電した際に混入した黄色ブドウ球菌が増殖し、菌の産生した「エントロトキシン」が末端製品中に混入して大事件となった。黄色ブドウ球菌の「エンテロトキシン」は熱に強く、100℃の加熱によっても失活しないので、多くの人が食中毒を起こした。原因となった黄色ブドウ球菌がどのような経路で生産ラインに混入したのかはいまだにわかっていない。

「エンテロトキシン」を産生する黄色ブドウ球菌は、ウシにも、あるいは人にも常在細菌的に存在するので、予防にあたっては大変難しい問題がある。

3.腸炎ビブリオ感染症
 夏に多い腸炎ビブリオ感染症も、食品媒介感染症として非常に重要。原因菌が近海海水中に常在していて、水揚げされる魚介類を汚染すること、しかもわが国の食文化として生の魚介類を好んで食べることが、とくに夏に腸炎ビブリオ感染症が多い原因となっている。

腸炎ビブリオは、「耐熱性溶血毒」という強力な毒素を産生するが、この毒素は下痢の原因毒素であるばかりでなく、心臓の拍動を止める「心臓毒」であることがわかっている。そのため、年間数万人と推定される腸炎ビブリオ感染患者の中には何人か、あるいは相当数の死者が存在するはず。突然原因がわからず死亡する例として報告されることが多く、腸炎ビブリオ感染症との因果関係を証明することは難しいため、注意の必要な食品媒介感染症である。

4.ノーウォーク様ウイルス感染症(ウイルス性胃腸炎)
 従来、「小型球形ウイルス(srsv)感染症」として呼ばれていた感染症(jomf news letter ?89参照)。代表的な原因食材がカキであることから、カキが食卓にのぼる秋から冬にかけて多発。しかも、直接生ガキを食べた人から人へ感染を起こす。小児に多い。

カキは、養殖海水中のプランクトンを栄養源とするため、大量の海水を吸入してろ過するそうだ。その過程で、海水を汚染している「ノーウォーク様ウイルス」がカキの中腸腺に蓄積される。こうして汚染された生ガキを食べると、下痢、嘔吐、腹痛を主症状とする急性胃腸炎を起こす。

東南アジアでは、年間を通じて発生しているので要注意。生ガキを好物とする人には、辛い話。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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