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話題の感染症(10) 

jomf news letter no.101
(海外邦人医療基金)
2002.6


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アメーバ赤痢

 平成14年5月10日夕刻、京都より緊急電話(医療相談)が入った。「腹痛で入院した娘(27歳)が、盲腸炎で手術を受けたが、病巣からアメーバ赤痢が検出された。しかも、今、i.c.uに移されると聞いて、大阪の病院に向かっているところ、、、。血圧低下し、危篤状態にある。なんとか治療の方法はないでしょうか」という内容だった。

かなり、切迫している様子なので、担当の先生から病歴を聞くことにした。担当医は、「アメーバ赤痢は、2年前に東南アジア諸国を旅行した時に感染したものと思われる。今回、盲腸炎で手術。腸穿孔も合併している。今、血圧低下、全身状態極めて悪く、i.c.uに移したばかり。」その大学病院でも初めての経験なので、「感染症の専門医のアドバイスをいただき、フラジールを点滴しながら加療したのですが、、、これ以上の方法はない」という返事だった。
父親から2回目の電話が入り、「今、病院に着いたところ、i.c.uにいます」「インターネットで先生の事を知りました。誠に申し訳ありませんでした。担当の先生と話をして下さって、ありがとうございました。」ということで切れた。そして、娘の死亡の報を受けたのが、深夜11時だった。残念という以外、言葉はない。

アメーバ赤痢は、感染症新報で4類感染症に分類されている。診断した医師は7日以内に最寄りの福祉事務所に届出が義務付けられている。年間10件位のアメーバ赤痢に関する医療相談を受ける。この事件の前、2月に受けた「海外からの医療相談」の内容(a)を紹介し、アメーバ赤痢(b)についてふれた。
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(a)海外からの相談内容(メールによる)

q、現在、jicaのシニア海外ボランティアで中東ジョルダン、アンマンに住んでいます。2月3日に子供(7歳男児)が発熱と下痢をおこし、同日主治医の指示で検便をしましたところ、アメーバe.histolytica(cyst)が検出されました。医師の指示でelyzole(メトロニダゾール)750?錠を1/4に割って1日3回飲ませました。下痢は1日後には治まり、熱もその後出ていません。エトロニダゾールの服用は続けました。
2月10日再度検便をしました。結果は、粘液、アメーバとも未検出でしたが、便中の赤血球が多いとの事で、さらに4日間エトロニダゾールを服用しました。2月16日また検便をしましたが、やはり赤血球が18〜20(単位不明)検出されたため再度3日間のエリゾールを指示されました。
子供はいたって元気で、便通も全く正常です。ただ、便中の赤血球が依然検出されるのが心配です。18〜20という数字しかわからないのですが、主治医は心配ないので、23日にまた検便するように指示がありました。
アメーバの予後では、腸の出血が続くのでしょうか?便中の赤血球数はどの程度であれば正常なのでしょうか?曖昧な質問ですがよろしくお願いいたします。

a、アメーバ赤痢の感染は、アジアに限らず中東でも多いのです。検便でアメーバの胞子(cyst)が検出され、メトロニダゾールを服用した点は問題ありません。検便で赤血球があるというのは、腸管から出血しているという意味です。これは、アメーバ赤痢が腸管に感染したことを示すものです。
18〜20という数字は、顕微鏡で見て1視野に18〜20の赤血球が見られることを示しています。これが0になるまでは、少々時間がかかると思います。
主治医の先生の指示通り、23日に再受診下さい。

q、21日の昼までメトロニダゾールを服用し、その後は中止しています。22日夜から蕁麻疹が出たようで、ヒスタジン(プロメタジン)25mgを朝晩に半錠ずつ服用し、レスタミンコーワ軟膏を塗っています。かゆみは殆どないようですが、まだ発疹が少しあります。発熱もなく、痛み、倦怠感もなく、本人は非常に元気です。23日、検便を行いました。結果は、pus o-1、parsites、ova、他すべて未検出でしたが、赤血球は"abundant"ということで、まだ出ています。前回の18〜20より、まだ多いようなのですが、小児の場合、腸管の傷の回復にはまだ時間がかかるのでしょうか?他の疾患の可能性はないのでしょうか?蕁麻疹(と思います)様の発疹と関係はないのでしょうか?

a、赤血球については、もう少し経過をみましょう。またご連絡下さい。アメーバは、検便の結果から消えていると考えられます。蕁麻疹ですが、メトロニダゾールの副作用と思われます。そのままで経過を見てください。

q、昨日、主治医に検便の結果と、蕁麻疹を診てもらいました。メトロニダゾールはもう服用しなくてよい。2週間後に検便を行う。蕁麻疹には、ヒスタジンを半錠ずつ1日2回服用する。との指示でした。本人の様子をみながら指示に従うつもりですが、何か生活上の注意点はあるのでしょうか?

a、蕁麻疹は、メトロニダゾールの副作用と考えられるので、服用中止で正解です。生活上の注意は特にありませんが、日光の紫外線を避けたほうが良いと考えられます。
 
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(b)アメーバ赤痢

疫学・病原体

 アメーバ赤痢は、地球上で10%(約5億人)が感染していると推測されている。感染者の糞便からは、光学顕微鏡下にアメーバ赤痢(胞子)と同定される原虫が検出される。最近、これらの「アメーバ赤痢」は、明らかに異なる病原種と非病原種の2種類の原虫に分類されると結論された。その割合は、1:9程度と考えられ、約1%(約5000万人)が病原種の感染者ということになる。

 感染者の多くは、発展途上国に集中。多くの先進国では、これら原虫は一般には流行していない。先進国で感染率が高い集団は男性同性愛者、発展途上国からの帰国者や知的障害者収容施設収容者などである。なかでも、男性同性愛者間に流行する赤痢アメーバ感染症は、性感染症といわれ、梅毒、hiv感染症、b型肝炎、性器ヘルペスなどを合併していることが多い。

臨床症状

1. 大腸炎
アメーバ赤痢による大腸炎は粘血便、下痢、排便時の下腹部痛などを主症状とする。肝膿瘍などの合併症を伴わない限り、発熱をみることは稀。下痢による発症は一般に緩除で、その程度も粘血を混じた2〜3回/日程度のものから、テネスムス(下痢、腹痛の繰り返し)を伴い、1日に20回以上の粘血便を示すものまで多彩。多くの症例でこれらの症状は数週程度の周期で増悪・寛解を繰り返す。アメーバ赤痢の病変は大腸(好発部位は直腸・s状結腸・盲腸・上行結腸)にあり、小腸性下痢に比べて糞便の排出量は少ない。
多くの患者は、内痔核、潰瘍性大腸炎と誤診され易く、年余にわたり投薬を受けている例があるので、注意が必要。

2. 肝膿瘍
発熱、上腹部痛、肝肥大、盗汗などが主な臨床症状。最も多いのは発熱。発病初期はかぜ症候群、インフルエンザと誤診される例が多いが、やがて上腹部痛が出現し、画像診断から肝膿瘍を疑われることで、本症を診断する糸口になる。
なお、アメーバ性肝膿瘍の50%は下痢や粘血便などの腸管症状を伴わず、臨床的には原発性肝膿瘍として発症する。ここまで進むとアメーバ赤痢の治療は、困難となる。

診断

1. 糞便
検便により、アメーバ赤痢の栄養型、のう子を確認。3日くらい続けて検便すること。
2. 内視鏡
内視鏡でアメーバ赤痢による大腸潰瘍を確認。
3. 血清抗体
アメーバ赤痢に対する特異抗体が陽性と出たら、アメーバ赤痢である。
4. 肝膿瘍
超音波、ctなどで肝膿瘍を確認。肝膿瘍内寄生部から、アメーバー赤痢を検出すれば間違いない。
5.その他
 pcr法などでアメーバ赤痢に特有な遺伝子配列を検出。

治療
大腸炎、肝膿瘍に対する第一選択薬剤は、メロトニダゾールである。本薬剤は、アメーバ赤痢に対する国際的基準治療薬で、著明な治療効果が証明される。
投与量は、1〜2グラムを分3〜4とし、7〜10日間投与する。嘔気、嘔吐、肝障害、白血球減少、発疹など、さらにうつ傾向、運動失調、めまいなどの副作用が発現することがある。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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