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話題の感染症(9) 

jomf news letter no.100
(海外邦人医療基金)
2002.5


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「ebウイルス感染症」〜急性肝炎と紛らわしい〜

いろいろな病気がある。当院(神奈川県)で最近、6人の「ebウイルス感染症」を扱った。39〜40℃の高熱が続き、肝機能障害があり、脾臓が腫れる病気。頚部リンパ腺が腫れ、黄疸があらわれたため、入院にて加療。すべて19〜28歳の若者だった。キスなどでうつる「伝染性単核増多症」ともいわれている。

病原体
 ebウイルスは、エプスタイン・バー・ウイルス(epstein−barr virus)というヘルベスウイルス群に属する。 健康な人でも10〜20%の頻度で検出される。米国の資料だと、35〜40歳の成人の95%がこのebウイルスに感染歴がある。日本の資料では、成人で100%感染、小児でも70%の感染歴があるという。世界中どこでもみられる。

病気の種類
 ebウイルスによる感染症は、次のタイプに分かれる。

1. 伝染性単核増多症→最も多い。
2. 慢性活動性ebウイルス感染症→問題となる。日和見感染症である。
3. バーキットリンパ腫→熱帯アフリカの小児に多発する悪性リンパ腫。一種の癌である。
4. 上咽頭癌→中国南部の成人に多い。薬草との関連が話題になっている。
5. 胃癌→あまり知られていないが、日本の胃癌の10%がebウイルス関連だと指摘されている。

 以上の中で、ebウイルス感染症の代表的な「伝染性単核増加症」にふれる。

伝染性単核増多症

症状のポイント

 以下の4点がポイントとなる。

1. 元気な若者が発病する。
2. 発熱、扁桃炎、リンパ腺がはれる。
3. 血液で異型リンパ球が上昇する。
4. 抗ebウイルスの抗体価が上昇する。

検査

 血液検査:

・ 白血球数は1〜2万に増加。
・ 異型リンパ球が血中に認められる。なかでも、単球が60%以上に増加する。
・ 血小板数は減少する。

 抗ebウイルス抗体価

・ 特異血清反応として、抗ebウイルス抗体価が上昇する。
・ 初感染では、vca-igm抗体が上昇することがある。
・ 再発では、vca-igg抗体が認められる。

 異種白血球凝集反応

・ パウルバンネル反応が古くから診断に用いられていたが、日本人では陽性を示すことが少ない。
・ その他、寒冷凝集反応、抗カルジオリピン抗体などが陽性に出る。

 肝機能障害

・ 肝機能障害があり、急性肝炎と間違われる。
・ got、gpt、ldh、ビルビリンなどが上昇する。
・ その他、ttt、ztt、γグロブリンが上昇し、免疫グロブリンigmが増加する。
・ a、b、cなどの肝炎ウイルスが陰性であることを確認する必要がある。

治療法

1. 一般療法

  確立された特異療法はないが、抗ウイルス剤(アシクロピル)を試みる場合がある(保険適応はない)。一般に安静臥床させ、肝庇護食にて経過を観察する。肝機能障害に対しては対症療法でいく。咽頭痛やリンパ腺炎のため、食べれないことが多く、輸液療法が必要となる。
発熱、頭痛、咽頭痛、関節痛に対しては解熱鎮痛剤を投与する。鎮痛剤のなかでアスピリンはライ症候群との関連も示唆されているので、アセトアミノフェンかイブプロフェンを選んで投与する。

2. 抗菌薬療法

本来抗菌薬の適応はないが、調べてみると6人中2人に、溶連菌感染を合併していた。
ある資料では、1/3に合併するという。咽頭培養、溶連菌抗原を検索し、抗菌薬を使用する。
ebウイルス感染症では、免疫応答が異常となり、抗体ができやすく、アレルギー反応が生じやすい。特にアンピシリン(abpc)を投与すると早期に抗体が産生され、発疹などのアレルギー反応を高率に認める。当院で1人発疹が出た。もともと抗生物質にアレルギーのある人はもちろんだが、ペニシリン系薬剤、セフェム系のセファドロキシル、セファトリジンは服用しないほうが良い。医師に相談すること。

3. その他

中枢神経症状、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、心筋炎、心嚢炎など重症の合併例が報告されている。また、咽頭炎・扁桃炎による気道閉塞で困ることがある。重症例や遷延例には、副腎皮質ホルモンを短期間試みる必要がある。

海外での対応

 以前、重症のためエルアスナム(アルジェリア)からパリに24歳の若者を緊急移送した経験がある。その時、現地の医師に脾臓破裂の可能性が高いので、遠くへの移送は危険だとアドバイスを受けた。
振動の激しい移送手段を避ける工夫が必要。脾腫の確認は手で触れることでも分かるが、超音波だと確認しやすい。その他、脳炎、髄膜炎を併発することがあり、問題の感染症といえる。

 当院での経験例を加え、解説した。
一般には、「感邪のこじれ」あるいは「急性肝炎」と思われがちなので、高熱が続き、扁桃炎が長引く時や、全身倦怠感が著しいときは、「ebウイルス」を念頭に医師に相談したほうが良い。

 ebウイルス感染症は、軽視できない。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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