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話題の感染症(4) 

jomf news letter no.94
(海外邦人医療基金)
2001.11


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炭疽菌テロ

 かつては、感染症対策やその国の医療事情の調査が主だった私たち海外医療の専門医も、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以来、その分野を広げる必要性に迫られた。すなわち、テロにまつわる危険情報や生物化学テロの実情も解説しなければならなくなったからだ。それまで増え続け、今夏だけで268万人を記録、総数1782万人にまで及んだ海外渡航者が、テロ事件以来、米国を中心に急激に減少した。世の中は、あの事件以来、たしかに変わった。

 米国が誇る世界貿易センタービルに旅客機が突っ込んだ当日、私は基金の佐久間氏と共に韓国ソウルにいた。韓国の医療事情の調査が目的で訪韓していたのだ。一般市民の生活はあまり変わらなかったが、米軍基地と南北問題を抱える韓国は、なんとなく騒然としていたし、南北境界線はいつになく慌しかった。韓国の危機管理態勢は、日本より進んでいる印象を受けた。後でわかったことだが、日本人より数少なかったが、韓国人もあのビルで多数行方不明になったのである。

 その後の全米を揺るがす炭疽病事件。米国で炭疽菌感染者が出たのは25年ぶりとのこと。テロの可能性が深まり、心理的な恐怖心が世界を震撼させた。この事件は、粉末状の炭疽菌を郵便で送るという卑劣な手段だった。1993年オウム真理教の狂った集団が、東京亀戸で炭疽菌をばら撒くという事件があった。幸いにその炭疽菌は毒性が無かったそうだ。もし毒性が残っていたら、亀戸周辺の住民に大きな被害が出たことは間違いない。炭疽菌は熱に強く、灼熱の砂漠の中でも生きられる。普段、芽胞という殻の中にいて、感染の機会があると冬眠から覚めるように活動を始めるやっかいな細菌であり、この特性を見込まれて(?)生物兵器に選ばれたのである。

 炭疽菌は、もともと羊毛業者や家畜飼育者に感染する病気で、今でもアフリカなどで病人が出ている。皮膚感染では20%、肺感染では90%、消化器感染では25〜60%が死亡する。炭疽菌の実態を表にまとめてみた。なお、炭疽菌以外に生物兵器として不気味なのは、ペスト菌、天然痘、ボツリヌス菌、ブルセラ菌、野兎病菌などである。ある資料によると、人口50万人の都市に上空から50kgの生物兵器を散布したとすると、炭疽菌だと125,000人の被害者が出て95,000
人が死亡、チフスだと85,000人の被害者が出て19,000人が死亡するという、極めて強力な武器になる。

バイオテロ関係の詳細は、以下で閲覧可能である。

・バイオテロ関係

cdc(centers for disease control and prevention),public healthemergency preparendness & response

http://www.bt.cdc.gov/

米国united states army medical research institute ofinfectious diseases

http://www.usamriid.army.mil/links/bdr.htm

炭疽菌の感染経路
皮膚炭疽病
肺炭疽病
消化管炭疽病
感染経路
皮膚から
皮膚から感染する例が最も多い。
肺から
空気中に漂う炭疽菌の芽胞を吸い込むことで感染する。
消化器から
感染経路としては、極めて稀。ただし喉から腸まで、消化器のどの部位も感染の恐れあり。
感染方法
接 触
皮膚の傷口などから炭疽菌の芽胞が侵入する。体内に入ると菌が目覚めて増殖し、毒素をつくり出していく。
吸 入
肺に吸い込まれた炭疽菌の芽胞は、小さな袋状の肺胞に入り込み、時を待つ。潜伏期間は数日から長ければ60日に及ぶ。
食物摂取
炭疽菌に汚染された羊や牛などの肉を、十分に火を通さずに食べると、芽胞が消化器のどこかに入る。
症 状
発 疹
最初は虫さされのような膨らみが水膨れになり、次第に黒ずんだ傷口になる。
風邪に似た症状
発熱や胸の痛みなど、初期症状は風邪に似ている。その後、呼吸障害や全身性ショックを引き起こし、死に至る。
腹 痛
初期症状は吐気や嘔吐、疲労、食欲不振や発熱など。そのうちひどい腹痛や血が混じった下痢をするようになる。
菌の
働き方
毒素が周辺の組織を襲う。
肺胞内の炭疽菌が増殖し、毒素を放出する。
炭疽菌の毒素が消化管の内壁を侵す。これが周辺の組織にも広がっていく。
リンパ節に入ると感染は全身に広がる。
死亡率20%
感染が全身に広がると
死亡率90%
死亡率20〜60%


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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