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海外で暮らすための健康管理学(6)第2章 予防接種(その5)
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海外で暮らすための健康管理学(6)
大利昌久
前 東京大学医科学研究所感染症内科
現 長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
海外邦人医療基金 (顧問)
出典:「神奈川県医師会」(2001年6月号より)
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第2章 予防接種(その5)
7)小児の予防接種(まとめ)
小児科の先生から、小児にしぼった予防接種の解説をしてほしいという連絡が複数ありました。 そこで、今回は小児に限ってまとめてみました。
●小児の予防接種で必要なもの
最低、BCG、ポリオ、三種混合、麻疹、風疹、日本脳炎、おたふくかぜ、B型肝炎は、接種しておきたい。
@ BCG
途上国での肺結核を考えると、海外渡航予定者なら 、生後1ヶ月を過ぎれば、BCGの接種をしておくこと。この場合、ツベルクリン反応は必要。
A ポリオ
2回接種では不充分。年長児では3回接種を勧めたい。日本を含め途上国では、生ワクチン接種を勧めたい。日本を含め途上国では、生ワクチン接種(経口)がおこなわれているが、先進国では不活化ワクチンを組み合わせて3回以上接種する方が良い。
B 三混(ジフテリア、百日咳、破傷風)
途上国では、破傷風で死亡する乳児が後を絶たない。この現実から、少なくとも三混を2回接種し、破傷風の免疫能を高めてから渡航させたい。
C 麻疹
先進国ではMMR(麻疹、おたふく、風疹)がおこなわれている。少なくとも1歳までには、麻疹接種を済ませたい。
D 風疹
女子の先天性風疹症候群を防ぐために実施している国が多いが、男女小児の接種を勧めたい。先進国でのMMRを利用するのも良い。
E 日本脳炎
日本の方式だと遅くなるので、海外渡航する場合は、6ヶ月以上の小児には接種を勧めたい。日本脳炎が流行していない地域では、それほど深刻でないため、日本通りでも良い。
F おたふくかぜ
現地でのMMRの利用を勧めたい。
G B型肝炎
海外では、新生児すえてにB型肝炎を接種している国が多い。途上国に限らず長期に住む場合は、検討を要する予防接種である。是非、かかりつけ医に相談した方が良い。
8)メフロキン(抗マラリア剤)の登場
前回述べた、抗マラリア剤の予防内服のうちメフロキンが国内でも入手可能となったので、この話題を追加しておく。
クロロキン耐性熱耐熱マラリアの治療薬として開発されたメフロキン。2001年6月1日、厚生労働省の通達により、日本でも販売が認められた。海外医療を担当している筆者らの長年の要望が、やっとみのったことになるが、厚生労働省は、治療薬として認めたもので、予防薬はこの限りではないとしている。何故こんなにかたくなに坑マラリア剤の普及に理解がないのか不思議。どうやらクロロキンの薬害事件に原因があるようだ。
1992年、日本のPKO平和部隊が、カンボジアに出向。カンボジアには、クロロキン耐性熱耐熱マラリアが流行しており、医療関係者は、PKOの安否を気遣ったものだ。しかし、当時メフロキンは日本で入手不可。当時の厚生省は、日の丸を意識してPKO活動をおこなう部隊に対しても、表向き何ら積極的に対策を図らなかったのである。
そこで動いたのが民間。当時、メフロキン製造元スイス・ロッシュ社に掛け合ったが駄目。それならばと言うので近場のバンコクで大量のメフロキンを入手。そこで次の問題が生じた。薬の量が多量(約5,000錠)しかも、日本で未承認のため、成田の税関で没収される可能性が高いことから、バンコクより、カンボジアのプノンペンに運び、到着したPKO部隊に現地で渡すことが出来たのである。
なんともはや、国の対応は遅い。この民間人は、後に自衛隊から感謝状を贈られた。メフロキンの登場によって、昔、苦労した民間人のことを思い出した。その方はもうこの世を去っている。
オランダのPKO部隊は、マラリアで2名の隊員を失った。日本のPKO部隊からは、1人のマラリア患者も出なかったことを付しておく。
第3章 機内での健康管理
海外に出る時に利用する航空機。その機内でどういうことに注意したら良いのだろう。筆者の専門外だが、航空医学専門医の資料をもとに、地球の1/3を歩いた実際の経験をおりこんで解説する。
1)機内の環境と疾病
機内と地上の環境の違いが、たくさんある。 気圧、湿度、揺れ、長時間の着席などの環境変化を熟知しなければならない。
@ 気圧
通常、航空機は7,000〜13,000mの高度で飛ぶ。機内の気圧は、与圧装置によって加圧されているが、地上気圧よりも低い。一般に1,500〜2,000mの高度にいるのと同じ位の気圧なので、低酸素症をおこす人もいる。特に心臓病、呼吸器病、貧血のある人は、長期の飛行は要注意。また気圧の低下によって空気を含んでいる部分、特に腸管内のガスが膨張し、腹痛(航空性腹痛)をおこしたり、その他、耳痛、歯痛をおこす人もいる。妊婦の搭乗については、出産予定日から14日以内(国際線)、国内線では、7日以内の場合、産科医の同伴搭乗が条件になっている。なお、28日以内の妊婦には、医師の塔乗許可の診断書が必要。気圧は、離陸後15分の間に1気圧から0.8気圧に落ち、降下し始めると0.8気圧から1気圧に戻る。この気圧の変化によって航空性歯痛、航空性耳痛、航空性中耳炎などがおこる。
●航空性腹痛
機内食を食べ過ぎたり、炭酸飲料を飲み過ぎたりすると、胃腸内の空気の膨張が加速され、航空性腹痛をおこす。チューインガムを噛むことにより、空気を飲み込むことがあるので、これも要注意。
●航空性歯痛、耳痛、中耳炎
機内の気圧の変化によって虫歯のある人は歯痛をおこすことがある。治療中の歯の詰め物の隙間に空気が含まれていて、その空気が膨張するためである。耳痛は多くの人が経験する。通常、中耳と外耳の気圧は同じだが、気圧の変化によって不均衡になる。飛行機が上昇する時、中耳も中の空気が膨張、下降する時、空気が収縮。この収縮の時、耳管が中耳の方に引っ張られ、耳管がふさがった状態になり鼓膜も中耳の方に引っ張られ、鼓膜が傷ついて中耳炎をおこす人もいる。
A 湿度
機内の湿度は24度前後に保たれているが、飛行時間が長くなるにつれ、湿度が下がり乾燥。そのため、鼻、目などの粘膜が乾燥し、コンタクトレンズによる角膜障害が起りやすい。また、飲酒により利尿作用で脱水症状に陥る人もいる。l
B 揺れ
車酔い、船酔いと同じく、空酔いする人もいる。酔い止めを服用し予防することも出来るが、機内でも暴飲暴食を避けることが必要。
C 長時間の着席
最近マスコミを賑わした「エコノミークラス症候群」が問題である。長時間座席に座っていると血液が凝縮し太ももに血栓(深部静脈血栓)が出来る。この血栓が、飛行機から降りて歩いている間に血栓の一部が肺に移動し、肺の血管が詰まって肺塞栓症を引き起こし、呼吸困難にて死亡する人もいる。最近では、航空会社が座席での足の運動療法を機内のテレビで流すようになった。足をこまめに動かし、水分を補給することが大切。肥満者、ピル服用者、妊婦、ヘビースモーカーなどの人は、要注意。なお、糖尿病の人は危険度が高い。
エコノミークラス症候群は、エコノミークラスの人だけでなく、ファーストクラスの人でも、また航空機ばかりでなく、長距離バス旅行者にも発生していることを注記しておく。
2)機内での注意
快適なフライトをするためには、以下のような点に心掛ける必要がある。
@ 空酔いの可能性の高い人は、搭乗30分前までに酔い止めを服用。
A 普段服用している薬は、いつでも服用出来るように機内に持ち込むこと。
B 服装はゆったりしたものにし、肌の露出を避けた方が良い。
C 水分を充分補給し、アルコール、炭酸、カフェインなどの飲料水はなるべくひかえること。食事は腹八分に。
D 下肢をなるべく動かし、エコノミークラス症候群を避ける努力をする。
E コンタクトレンズをはずし、メガネに変える方が無難。どうしてもコンタクトが必要な時は、頻回に点眼すること。
F 耳痛、腹痛などがあったら、我慢しないでスチュワーデスに相談すること。
参考資料
1)飛鳥田一雄、安藤秀樹:機内環境と疾病予防策、2000年vol120.No.11(モダンフィジシャン)
2)森尾比呂志:航空機による旅行中に発生した肺塞栓症の14例−エコノミークラス症候群:2000年.No48(呼吸器と循環)
代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ
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