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海外で暮らすための健康管理学(5)

大利昌久
前 東京大学医科学研究所感染症内科
現 長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
海外邦人医療基金 (顧問)
出典:「神奈川県医師会」(2001年5月号より)


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6) 予防接種
 予防接種に関しては、かなり複雑で、理解しがたい問題が多い。そこで、本号では予防接種に関し、良く質問を受ける項目について、なるべく図表を用いてQ&Aでまとめた。
Q.予防接種にはどんな種類があるのですか
A.病原菌の感染を予防するために3種類のワクチンが製造されている。一般に
生ワクチンは長期間有効。不活化ワクチンやトキソイドは数回の接種が必要。

表6 予防接種の種類
生ワクチン 毒性の弱い病原体を生きたまま接種するもの。
ポリオ、BCG、麻疹、風疹、おたふく、黄熱病。
不活化
 ワクチン
病原体をホルマリンなどで殺してから接種するもの。
コレラ、狂犬病、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、百日咳
トキソイド 病原体そのものでなく、菌の再生する毒素を不活化するもの。ジフテリア、破傷風。

Q.時間に余裕がない場合の予防接種の受け方は?
A.日本のやり方だと、1回に1種類のワクチン接種が原則となっていて、
●生ワクチン接種後は4週間
●不活化ワクチンやトキソイド接種後は1週間、次のワクチン接種は出来ないことになっている。しかも、不活化ワクチンやトキソイドは、数回の接種が必要。そこで、短期間に予防接種を終わらせるために、次の方法が考えられる。1995年4月の改定によって、法律的にも「医師の判断」で同時接種が可能となった。
1)不活化ワクチンやトキソイドは、数種類を同時に接種する。
2)生ワクチンとの同時接種も可能。
3)生ワクチン同士は、可能ならば1ヵ月あける。
Q.追加接種のスケジュールはどうなってますか?
A.追加接種のタイミングを表7に示した・

表7 追加接種スケジュール
第1回追加 第2回追加 その後追加
破傷風
狂犬病
日本脳炎
A型肝炎
B型肝炎
コレラ
1ヵ月後
1ヵ月後
1週間後
2〜4週間後
1ヵ月後
1週間後
1年後
6ヶ月後
1年後
6〜12ヵ月後
6ヶ月後


10年後
2年後
4年後

8ヵ月後


Q.不健康地に行く場合に必要な予防接種は何ですか?
A.基本的な予防接種は。「ポリオ、BCG、DPT、麻疹、風疹」。その他にA型肝炎が必要な地域もあり、感染症の情報を出発前に調べることが大切。
Q.日本にないワクチンは、どんなものがあるのですか?
A.日本国内で許可されていない予防接種は以下のものです、これらは、可能ならば現地で接種することになる。(表8)

表8 日本で未承認のワクチン類
・流行性髄膜炎ワクチン   ・MMR
・腸チフス(生ワクチン)    ・腸チフスvi多糖体ワクチン
・FSME(中央ヨーロッパダニ媒介脳炎)
・5種混合ワクチン(DTP+ポリオ+HIB)
・コレラ(生ワクチン)
・フェモフィルスインフルエンザb菌結合型ワクチン(HIB)

Q.各地にある日本人会診療所でも予防接種は受けられますか?
A.海外邦人医療基金が運営するシンガポール・ジャカルタ・マニラ・大連の中で、シンガポール・ジャカルタ・マニラでは表9の予防接種が可能(〇印)。なお、△印は薬局で予防接種を購入すれば、接種してくれる。
表9 海外クリニック(海外邦人医療基金)での予防接種実施状況
シンガポール
日本人会診療所
ジャカルタ
日本人医療相談室
マニラ
日本人会診療所
三種混合
破傷風
狂犬病
日本脳炎
髄膜炎
BCG
MMR
麻疹
風疹
コレラ
ポリオ
A型肝炎
B型肝炎








×









×



×

×





×
×
×



×
×



Q.米国・英国での小児の予防接種スケジュールはどうなっていますか?
A.先進諸国の代表として、米国(表10)、英国(表11)でのスケジュールは以下の通り。参考のために、日本式(表12)のも示した。

表10 米国推奨予防接種スケジュール
予防接種項目
ポリオ
DPT
(三種混合)
TD
(注2)
MMR
(麻疹)
インフルエンザ
b菌(Hib)
B型肝炎
0→2ヵ月
1
2ヵ月
1
1
1
2→4ヵ月
2
(注3)
4ヵ月
2
2
2
4→6ヵ月
3
6ヵ月
3
3
6→8ヵ月
6→18ヵ月
3
12→15ヵ月
1
4
12→18ヵ月
4
(注4)
4→6才
4
5
(注4)
2
(注5)
11→18才 1
Approved by the Advisory Committee on lmmunization Practices (ACIP)
         the American Academy of Pediatrics(AAP) and the American Academy of Family
         Physicians(AAFP).January.1995
注1.経口ポリオワクチン
  2.破傷風、ジフテリアワクチン
  3.2回目接種時は1回目より1ヵ月以上経過していること
  4.15ヵ月以上の小児はDTaPという3種混合ワクチンが接種されることもある
  5.MMR(麻疹)ワクチンの2回目接種は4〜6才又は11才〜12才いずれでも良い




Q.各国での予防接種スケジュールはどうなっていますか?
A.各国を表示するのは、紙面の都合上不可能なので、後の「参考資料」を熟読下さい。
Q.マラリアに対する予防接種はあるのですか?
A.今のところありません。マラリア流行地域では、抗マラリア剤の予防内服が必要。
ドキシサイクリン、メフロキン、クロロキン、プログアニールなどを服用します。
Q.青年海外協力隊(JOCV)や平和部隊(PKO)など、マラリア流行地に隊員を派遣する場合の予防内服はあるのですか?
A.マラリア予防薬を投与しても100%予防できる訳ではありませんが、表13のような方法を指導している。
表13 予防内服
ドキシサイクリン 毎日1カプセル(100mg)服用
リンサンクロロキン
(レゾヒン、

アラレンマララキンなど)
毎週1回2錠(150mgを2錠)
濃厚な流行地域では、毎週2回服用
硝酸クロロキン
(ニバアキン)
週1回3錠(100mgを3錠)
濃厚な流行地域では、毎日1錠(100mg)
週1回休薬
ネフロキン 週1回1錠(250mg)服用
ブルグアニル 毎日1回1錠服用

参考資料
1)平山宗広、中村安秀、岡部信彦、後町洋一、加藤章子、氏田由可:子供のための予防接種、2001年(母子衛生研究所)


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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