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海外で暮らすための健康管理学(3)第2章 予防接種(その2)
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海外で暮らすための健康管理学(3)
大利昌久
前 東京大学医科学研究所感染症内科
現 長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
海外邦人医療基金 (顧問)
出典:「神奈川県医師会」(2001年3月号より)
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第2章 予防接種(その2)
1) 予防接種の内外事情
2) 予防接種の内容(前号参照)
3) 予防接種スケジュール(前号参照)
(1)予防接種時の注意は何か(前号参照)
(2)最短接種スケジュール
任地によって必要な予防接種を選ぶ必要がある。
まず何を接種すべきか、次の点によって異なる。つまり、個人によって接種内容が違うことになる。
●予防接種の接種歴
●任 地
●滞在期間
●年 齢
接種スケジュール
日本では「三種混合」以外は単独接種するのが原則となっている。この原則に従うと赴任前の限られた日数で多くのワクチンをすべて接種することは不可能である。そこで、同時接種可能な方法を取り入れ最短でおこなう接種スケジュールを紹介する。海外では、「三種混合、ポリオ、B型肝炎、ヘモフィルスインフルエンザB菌」などの組み合わせて実施しているのが実情である。まず、次の点が重要(表5)
●不活性ワクチン及びトキソイドを同時接種することが出来る。
●生ワクチンの追加には、1ヵ月間隔をあけるのが望ましい。
表5 接種間隔
生ワクチン:ポリオ、麻痺、風疹、BCG、おたふくかぜ、黄熱など
不活化ワクチン:DTP、DT、T、日本脳炎、HB、HA、インフルエンザ、狂犬病、Hib
(3)予防接種スケジュールの注意事項
・狂犬病の汚染地域に赴任する人は、狂犬病の予防接種も必要
・A型、B型肝炎については、あらかじめ抗体検査をし、陰性の人のみ接種する。
・破傷風、狂犬病、A型肝炎、B型肝炎は日本国内で3回接種を済ませるのが理想的である。
・HIV感染者への生ワクチンの予防接種は、エイズの発症が促進される危険があるので注意。
・実際の予防接種計画は、赴任地によっても、人によっても違うのは当然である。
・海外派遣者には、可能な限り国内ですませ、やむおえない時は現地のスケジュールに従って接種を受けることが 原則。
4)予防接種の種類
予防接種を実施する機関は、市町村をはじめたくさんある。まず「かかりつけ医」が実施するのが一番良い。そこで、主な予防接種と海外事情についてふれておく。
(1)コレラ
インドでは新型のコレラが発生。日本製のコレラワクチンの効果は低いといわれるが、胃の手術を受けた人や、胃酸を抑えるH2ブロッカー、プロトンポンプインヒビターなどの胃潰瘍薬を服用している人は必須である。ただし、幸いなことに、2001年4月現在、コレラの予防接種を義務付けている国はない。しかし、コレラの感染情報には目が離せない。
(2)ジフテリア、百日咳、破傷風(三種混合)
途上国などは、予防接種の導入率が低い地域もあって、今だに深刻な問題である。ロシアでジフテリアが流行したのは、ついこの間である。経営状況に左右されるのが、予防接種行政だと思われる。なかでも、破傷風による新生児の死亡率は今だに高い。不潔な出産手段に加え、地域によっては、へその緒をナイフで切ったりする行為も残っている。熱帯亜熱帯地域では、新生児破傷風で約50万人が死亡していると推定される。
日本人は、破傷風の免疫が切れている成人(20歳以上)が多いので、追加接種が必要である。
・先進国の実情
三種混合はポリオと同時に接種する国が多い。接種回数は3回以上。1歳までに3回接種を済ませ、4〜6歳頃、二種混合(ジフテリア・破傷風)を追加接種。成人になって破傷風トキソイド単独追加をおこなっている国が多い。
・途上国の実情
先進国の実情とおおむね同じ。
・日本の実情
日本では、無菌体百日咳ワクチンが開発され、1981年より、改良型の沈降製二混ワクチンが使用されている。従来の全菌体ワクチンに比べ、副作用は減ったといわれる。
(3) 結 核
世界中で増加している。特に、中国、インドなど、アジア地域に多い。結核に免疫のない人にはBCGの接種が望ましい。1999年、ジャカルタ日本人学校でのツベルクリン反応で90人中80人が陰性だった。感染の危険性が高いという意味である。
・先進国の実情
先進国では、BCGを実施していない国が多い。米国では、CDCの意見をとりいれ、1996年に「BCG接種は効果があるが、米国の現状では必要ない」とし、小学校入学時にツベルクリン反応のみを実施。陽性者には全員胸部レントゲンを義務付けている。そのため、日本はBCGの接種により、ツベルクリン反応が陽性に出ることが多く、「結核感染者」とみなされ、胸部レントゲンがとられ、トラブルが絶えない。
ニューヨークでは1986年以降、結核患者が急増。1992年に3,811人の結核患者が新たに発見され、リファンピシン、ヒドラジトなどの抗結核薬に耐性の患者が多く深刻化した。そのため、結核対策に大規模な予算と人員を導入。1997年に、新患は1,703人と減り、多剤耐性患者も56人に減ったと報告されている。
・途上国の実情
途上国では生下時にツベルクリン反応をしないで、直接BCGを接種するのが常識となっている。
・日本の実情
1999年結核非常事態宣言が出され、「再興感染症としての結核」という認識が深まった。かなり早急な対策と意識改革によって、日本の結核感染は抑制されると思われるが、2000年12月、21歳男性の新規感染症を私の医院で扱ったことを考えると、そう簡単に撲滅されそうにない。
日本で実施している管針によるスタンプ式のBCG接種は日本独自の方法。海外では、注射針による皮内接種法が今だに実施されている。
(4) ポリオ
2000年までにポリオを地球上から根絶させることを目標に、WHO、ユニゼフが活動中である。しかし、今だに問題となる国は、インド、中国、パキスタン、ベトナム、エジプトなど。1992年、先進国といわれたオランダで、68人のポリオ患者が発生。注意が必要である。
・先進国の実情
先進国の多くは、5回以上投与している。生後2ヵ月以内に投与開始。不活性ワクチンを使用している国が多く、単独でなく三種混合ワクチンと合剤で実施している国も多い。
・途上国の実情
生下時生ワクチンを投与することがすすめられている。生後2〜3ヵ月以内に3回実施している。冷凍冷蔵設備が完備していない医療機関では、その効力に疑問がもたれる。
・日本の実情
日本では、生ワクチンの経口投与を2回実施。この方法は、世界で日本だけである。海外に出る場合、2回法ではI型、III型に対する抗体値が充分でないため、成人で追加接種が必要となる。
1994年の予防接種改正で、ほとんどが集団接種から個別接種を原則とすることになったが、ポリオだけは原則的に集団接種となっている。その理由は、人から人に感染するポリオウィルスなので、ワクチンを接種することで、まれに接種者の排便中のウィルスが他に感染する可能性があるからだ。
参考資料
1)海外医療:海外赴任者のための予防接種、1995年No.16(海外邦人医療基金)
2)神谷 斉:新しい予防注射、1996年(日本医事新報)
3)中村安秀、岡村信彦、小野崎郁史:海外に行く親と子の予防接種、1999年(母子衛生研究所)
代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ
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