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患者さんに対して
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患者としての体験が生んだ環境改善 〜医者と患者のハーモニーより〜
■はじめに
最近、学会、医師会などで「インフォームド・コンセント」という言葉が聞かれるようになりました。
日本では「説明と同意」「納得同意」とか、「知らされた上での同意」など、なかなか適訳がないようです。
それだけ含みのある言葉であり、専門家はむしろ邦訳せず、そのまま「インフォームド・コンセント」といっています。
私はインフォームド・コンセントを、「患者と医療の担い手との共同合意で病人を治していく基本精神」と位置づけ、意識的に実践しています。
「病気をみるより病人をみよ」といわれます。
私自身の経験ですが、昔、大病院に検査入院したことがあります。
白衣を脱ぐと私も一般の患者です。暗くて狭い部屋、防音の工夫がなく、廊下の足音がやたらに聞こえます。
この居心地の悪さに加え、その病院の医師たちの患者に対する思いやりのなさ。上半身裸のままの私の前で、誇り高き医師達は平気で雑談し不必要な会話を重ねます。大変不快な気分になりました。
まさしくこのような医師達に問題と提起しているのが「インフォームド・コンセント」だと思われます。
私は、今こそ、インフォームド・コンセントの展開によって、新しい医療を進めていく時代がそこにきているものと思っています。
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インフォームド・コンセントの環境作り
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1 建物の間取りの工夫
インフォームド・コンセントを効果的に進めるためには、「医院の設計そのものが大切である」というのが私の考えです。暗くて閉鎖的な部屋では患者の気持ちは晴れません。
私は19床の医院を設立するにあたって、「木造和風」を選びました。
私のいる山北町は、農家を中心とする高齢者の多い田舎なので、どちらかといえば和風建築が馴染むのです。医院の外壁は、明るい淡緑色にし、屋根を黒くして一般の民家を変わらぬ雰囲気にしました。玄関や待合室を広くし、窓を大きくとって採光に工夫しました。待合室の横に白い小石を敷きつめた「ミニ庭園」を配し、「図書室」を診察室の横に作りました。
さて、「診察室」ですが、患者のプライバシーを守るために、個室風にアレンジし障子を壁に配して応接間の雰囲気にしました。なお、可能な限り病室で食事をしないよう厨房の横に「食堂」を併設しました。以上、私が建物と間取りに配慮した主な点です。
2 ソフト戦略
図書室には、医学専門書ばかりでなく、一般向けの医学解説書も豊富にとりそろえています。
来院した患者さんは自由にこの図書室に入ることができ、自分の興味ある本を手にすることができるわけです。その本を手にした時、その患者さんの多くは質問を私にしてくるはずです。私は患者さんのそのような反応を期待しているのです。
診察室はインフォームド・コンセントの中心となる部屋です。
私の診察机ばかりでなく看護婦、事務員の机と椅子も置いてあります。病人にとっては、私一人より、看護婦、事務員らをまじえイキのあった会話をすることも必要だからです。
なお、よく、"Eye Level, Eye Contact"(目の位置を同じにし、目を見つめながら話すという意味)といいますが、私は椅子の高さを患者さんと同じにしています。
院内のあちこちに、私がアフリカや中近東で撮影してきた珍しい写真や、山北町の絵画グループに頼み、彼等の作品も展示してもらっています。珍しい写真や身近な絵画を見ていただいて、瞬時でも病気を忘れてもらいたいという気持ちがあるからです。
3 職員の教育
患者と医師だけでインフォームド・コンセントが成立するとは思われません。すべての職員がその意識を高めることが必要です。
私は職員の胸に「顔写真入りの名札」をつけさせています。患者さんに顔と名前を覚えてもらうためですが、職員自らの言葉に責任を持たせたかったからです。職員には次の点を教育しています。
* 患者さんを番号で呼ばないこと。
必ず「さん」とか「くん」とか敬称を付ける。お婆ちゃん、お爺ちゃんではなく、名前で呼ぶこと。
* 必ず相手の目を見て話すこと。書きながら、作業をしながらはいけない。
* 患者さんとすれ違う時は、一言声をかけること。「今日の血圧どうでしたか」、「食欲はでましたか」など。
* 私語をつつしむこと。私語をするくらいなら患者さん相手にすること。
* 患者さんの悪口をいわないこと。誤ったことがあっても、まず「そうですか」と素直に受けることから始める。
* 医療は病気を持った人たちへのサービスであるという精神を持つこと。
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診療室での患者指導の実際
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さて、今までの解説で、私の考えているインフォームド・コンセントの位置づけが理解できたと思います。つまり、私のいる診察室につく前に、「解放的な気分」になり、「自分の欲しい情報を得る環境」にあり、なんとなく安心したところで診察室に入る訳です。
そこで、実際どのように患者さんを指導しているかということですが、そんなに変わったことはしていません。ただ、意識的に行っているのは次の点です。
1. 初めての患者さんに
初めての患者さんは、やはり緊張しています。その緊張をほぐすため、「天気や季節の話」から入ります。
また、農家が多いため、農作物のでき具合など聞くことにしています。読みにくい名前だと「珍しい名前ですが、、、」などと質問します。問診に入るちょっとした「間」をとるのです。
2. わかりやすい言葉で問診
すべての患者さんに、当日の来院理由を書いてもらうために「診療カード」を渡しています。そこに記入されている訴えを中心に問診に入ります。
その患者さん自身の言葉を尊重して尋ねるようにしています。「胃袋が痛い」と書いてあれば、そのままの表現を生かし「いつから胃袋が痛いですか」と尋ねます。心窩部痛などという医学用語におきかえないで話します。方言で書いてあれば、その方言で問うことにしています。
3. 検査の必要性と説明
いろいろな検査をする場合、わかりやすく、例えば「肝臓の働きを調べましょう」と必ず理由をいいます。検査時期も「そろそろ半年たったので」と話します。頻回に検査を必要とする場合もその理由を説明します。
コンピューターの導入によって一般の血液検査は翌日わかるようにし、過去の検査結果も含め、なるべく経時的にグラフに示して説明します。
心電図、眼底、X線などは、なるべくその日のうちに説明することにしています。
4. 薬について
医薬分業ですが、薬の効用と副作用については、十分説明するようにしています。薬を変えるときも「血圧が安定した」とか理由を説明します。
また、診察を終わるタイミイグをうかがって、私の傍らにいる看護婦や事務員に、例えば、「朝、1錠だけでいいんですよ」とか、私の言葉をそのまま繰り返し説明させることにしています。つまり、とことん納得して服用してもらうことが第1と考えるからです。
5. 症状について
患者の権利に関するリスボン宣言の中に、「患者は十分な説明を受けた後に治療を受け入れるか、または拒否する権利を有する」とあります。
私は症状について、かなり時間をさいて正確に説明します。その場合、適当な本を示し、図や表など視覚にも訴え納得してもらいます。つまり、私の話を聞くだけでなく、他の感覚にも訴える訳です。
なお、私の説明に対し、どのように理解しているのかを知ることも必要です。後日、家人に尋ねたり、本人にそれとなく質問します。そして、どうも理解が足りなかったり、十分に納得していないようだったら、再度、説明を繰り返すことにしています。
6. 癌の告知
患者さんには、自分の症状について知る権利があります。しかし、「あなたは癌にかかっています」とはいいにくいものです。また、癌の人に「癌ではありません」というのも問題です。
ある資料によると、約9割の人が「知らせて欲しい」と望んでいるようです。たしかに、癌と知らずに最後の短い人生を無為に過ごしている人がいます。
私は、人それぞれに作戦をたて、「癌である」「癌に近い」「癌の疑いがある」という言葉を使いわけて話します。また、表現をやわらげ「このままだと癌になりますから」ともいいます。
逆に、家の人から癌を告げないで下さい、と頼まれることがあります。高齢者で死が近い場合は、その家人の心遣いを尊重することにしていますが、基本的には病気で苦しんでいるのは患者本人だということを説得するようにしています。
もちろん、私の告知方法がすべて受け入れられる訳ではありませんから、時には消極的になることもあります。
「インフォームド・コンセント」の環境づくりから、実際におこなっている私なりの患者指導を解説しました。とにかく、お互い人間であることを忘れないで、患者さんとのコミュニケーションを深めることが必要だと思われます。
「医の道は遠い、然し人の愛もてどこまでも歩みつづけなければならない」という先人の言葉をかみしめながら、インフォームド・コンセントを医院ぐるみで実践している毎日です。
代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ
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