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知られざる国内事情の舞台裏(6)

大利昌久
前 東京大学医科学研究所感染症内科
現 長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
海外邦人医療基金 (顧問)
出典:「神奈川県医師会」(2000年8月号より)


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大陸をまたぐ研究(その3)
3)各国の事情
1・ナイジェリア
 前号参照
2・エジプト
 ナイジェリアに比べると、かなり多くの医療機関が、一次および二次医療として利用されていた。緊急時には、ロンドンに移送される例が多い。
3・アルジェリア
 緊急医療が必要な場合には、植民地時代の関係でほとんどがパリに移送。その際、航空会社の契約医か日本大使館医務官に必要書類を記入してもらい、出国の手続きをとる。特にアルジェリアからパリまでの飛行時間は、わずか2時間と短いので、多くの場合、緊急時に対応可能と思われた、過去の資料では、盲腸炎、神経病、交通事故、肝硬変(吐血)、胃・十二指腸潰瘍(吐血)、不明熱などが緊急移送の対象となっていた。

4)海外への緊急移送(ナイジェリア)
1.定期旅客便による移送
 緊急移送の必要があれば、その企業のヨーロッパ駐在員に連絡をとり、必要なアレンジを依頼する。したがって、在留邦人を何処に移送するかは、企業側の事情と航空券入手の難易性によって決められる。航空会社によっては、医師または看護婦の付添いなしでは病人を搭乗させないため要注意。
 航空券の入手については、患者の「緊急移送の必要性」と、「感染症ではない」ことを証明した医師(医務官、企業の健康管理医、現地医師)の手紙を持参して航空券の手配を交渉する。仰臥位で移送する際は、付添人も含めファーストクラス6席分を確保する。
2.AIR−AMBULANCEによる移送
(1)海外旅行者傷害保険加入者の場合
 ラゴスでは、GESA ASSISTANCE、SFA、SOS ASSISTANCEと提携した損害保険会社と契約している人が多い。
 被保険者の症状が重篤で、AIR−AMBULANCEによる緊急移送が必要と医師が判断し、要請すれば医師、看護婦を乗せた特別機を指定した空港に送り、患者を収容して、ヨーロッパの病院まで運んでくれる。
(2)海外旅行傷害保険非加入者の場合
 個別にAIR−AMBULANCEを呼ぶことが出来るが、かなり高額な実費が請求される。
(3)AIR−AMBULANCEを利用する際のラゴス空港での手続き
 ナイジェリア特有の煩雑な手続きと関係者との交渉をいかに迅速に手際良く行うかが患者を早急に送り出す鍵となる。

5)在仏日本商工会議所の医療アンケートにみる「パリの医療事情」
 パリ在留邦人は通常の健康診断を、1・邦人所属企業の提携病院またはかかりつけの医師(診療所)で、2・一時帰国して日本で、3・企業の事業所内の現地診療所で受けていた。
 現地の病院で健康診断を受診するには、企業が病院の医師と嘱託医契約を結ぶ事が先決であり、委託することによって受診が可能という。また企業のほとんどはその従業員にたいしフランス労働省の指定する医療機関で年1回健康診断を受けることが義務づけられている。

 結論は以下の通り
1)赴任前の健康診断、健康管理については、その指導方法や内容が、各企業でまちまち。この問題は海外の問題ではなく、国内で整理すべき「国内問題」と思われた。例えば、どこかの公的乃至準公的な医療機関が中心となって全国規模で、海外に赴任する邦人の保健、医療に係わる基準づくりを行うことが望ましい。
2)ナイジェリア、エジプト、アルジェリアだけをみても、アフリカに在勤する邦人の医療不安は深刻である。日常診療に欠かせない「一次医療」すら安心してまかせられないのが実情。各国ごとの国状にあった邦人のための「一次医療の整備」を早急にはかる必要がある。
3)一次医療の整備にあたっては、「外務省医務官制度の再評価」と同時に、「法制上の枠をひろげるための検討」、例えば医療サービスの充実化と医務官不在時の代診医システム導入化などの実際問題を先に整備する必要がある。
4)「一次医療」の不備だけでなく、「緊急医療」についても、その国にまかせられないという深刻な不安がある。緊急患者が出た場合、日本人会が積極的に行動を起こさない限り、その患者を救うのは絶望的。そのため、国によっては、重装備の救急車、救急医療器具などを日本人会に配置する必要性もある。また、その際、オペレーティングスタッフ等の配置も必要。
5)緊急移送患者の移送地(中継地も含む)としては、ロンドンおよびパリ市内の病院が頻繁に利用されていた。但し、調べてみると、施設によっては、緊急医療に対応できない病院もあった。この方面での詳しい調査が必要である。
6)アフリカ、中近東在住の多くの邦人は、健康管理のためヨーロッパに出国していた。しかし、本当に健康管理休暇を生かし、健康診断や健康相談をうける邦人は、実は少なかった。その理由として「日本人医師がいない」、「日本の習慣にあった医療を受けられない」、「日本式の便利で簡易な人間ドックのようなセンターがない」ことなどがあげられる。この問題を解決するためには、実効性のある「海外邦人のための海外医療のあり方」について早急に検討、研究する必要がある。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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