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知られざる国内事情の舞台裏(4)

大利昌久
前 東京大学医科学研究所感染症内科
現 長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
海外邦人医療基金 (顧問)
出典:「神奈川県医師会」(2000年6月号より)


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海外医療機関情報(その2)
1)世界医療情報
 1996年、雑誌「臨床成人病」(東京医学社出版)が、「海外渡航者の疾病予防と対策」を特集した。藤田紘一郎教授(東京医科歯科大学)が企画、編集したもので、「海外赴任および旅行者のために」という副題がついている。その中で、厚生省成田検疫所の資料をもとに約91カ国の「海外保険医療情報」がまとめられていて、非常に役立つ内容となっている。病気になった時の医療機関、緊急時の連絡先などが明記されているので、これから渡航する国々の医療情報を得るには、手軽で実用的な資料といえる。ただし、1995年の資料なのですでに現状にあわない情報もあり毎年更新する必要がある。なお、WHOの資料をもとに、世界の主な感染症のマップが付してあり役に立つ。

2)海外医療機関の選定
 たくさんの海外医療機関の中から「優良で」「少しでも日本的」な医療機関を選定するために、私などは次のような方法をとっている。
(1)日本大使館及び日本人会の情報をもとに代表的な医療機関を視察し、各機関の医師、看護婦、検査技師などに会い、インタビューする。
(2)同時に、各機関の外来、病棟を訪れ、医療設備、医療器具、検査室、手術室、ICU、OCUなど重点的に見る。
(3)各国の保健省などの資料を入手する。
(4)在留邦人の医療事情を把握するために、日系企業関係、日本人学校生徒の健康相談を実施し、その問題点を把握する。
(5)健康相談の内容を有意義かつ統一化するため、あらかじめ準備した健康診断問診票を配布しておき、明記された内容に従って相談にのる。
 このような地道な調査によって、「少しでも日本人が受診しやすく」、かつ「診断や治療が的確におこなわれる」と思われる医療機関を源泉するのである。

3)日本語で受診できる医療機関
 海外医療機関の選定にあたり「日本語で受診できる医療機関」を是非おしえて欲しいという要望が多い、海外邦人医療基金がまとめたこの種の情報は膨大で役に立つ。1997年、米国、カナダ地域などの調査を終え、最新の情報を毎年更新する必要性にせまられている。ただし、海外で生活する日本人は、せめて英語を少しでも話せた方が良い。たいていの医師は英語を理解しているので・・・。

大陸をまたぐ研究(その1)
 厚生省の厚生科学研究費を受け、題して「発展途上国在留邦人の医療の確保における西欧先進都市の医療施設の活用に関する研究を行った。1987年のことで、開業してわずか3ヶ月目だった。
 それまで約8年間、日の丸を意識し、アフリカ、中近東、ヨーロッパを飛びまわっていたので、じっと診察室の椅子に座っているのがたいくつになっていたこともあり、迷うこと、研究受託をおこなった。しかし、休院という訳にもいかないので、医療を親友、真野健次先生(後に帝京大学付属病院院長)、吉本一哉先生(現東邦大学講師)らにお願いし、海外邦人医療基金の優秀な2人のスタッフと3人で約20日間の海外調査に出たのである。
 研究の目的は以下の通り。
(1)アフリカ地区をモデルにし、在留邦人に係わる健康管理対策についての調査。
(2)後進地域(アフリカ)から、先進都市(ヨーロッパ)への急患移送上の問題点と対策。
(3)先進都市(パリ)における邦人受け入れ可能な医療施設の状況および問題点。

 調査方法は以下の通り。
(1)海外在留邦人の健康管理対策をたてるための資料として、ナイジェリア(ラゴス)、エジプト(カイロ、アンキサンドリア)、アルジェリア(アルジェ)各々の日本人会医療委員に、「健康診断問診表」および「海外在留邦人医療についてのアンケート」をあらかじめ送付しておき、現地で回収した資料の内容についてさらに、インタビュー形式にて調査した。
(2)これらの回答の中でアフリカの各都市からヨーロッパの先進都市あるいは日本への緊急移送を必要とした実例について聴取し、 その概要と問題点を把握した。同時に外務省医務官からも情報を得た。さらに、先進ヨーロッパ諸都市での邦人受け入れ可能な病院について、その概況を調査した。
(3)パリでは、海外邦人の邦人医療基金の実施した「海外在留邦人の保健・衛生問題に関するアンケート調査」を参考にし、在仏日本国大使館の領事部担当官と検討を行い、問題点を把握した。
(4)総括的な報告を行うため、参考になる各種の資料に目を通した。

 調査結果は以下の通り。
(1)健康診断問診票にみる医療事情
 ラゴスでは、3日間に59人が受診。エジプトでは、2日間に98人。アルジェでは、2日間に53人、合計210人が受診した。
 体調を崩している者は、ナイジェリアで、マラリア、疲労感、皮膚病、精神不安、下痢、視力低下、低血圧など16人(うち幼児7人)。エジプトで、肝炎、皮膚病、虫刺症、下痢、風邪様症候群、不明の発熱。胆石、精神不安、乳癌の疑い、腰痛、食欲不振、突発性発疹など15人(うち幼児2人)であった。
 過去の病歴としては、ナイジェリアで赤痢、マラリア。エジプトで急性肝炎、急性腎?炎、腎臓結石、肺炎、リウマチ、腸チフス。アルジェリアで急性肝炎、急性中耳炎がみられた。
 赴任してから気になる症状としては、下痢、腹痛、食欲不振、便秘、悪心、嘔吐、頭痛、視力低下、めまい、鼻のかわき、喘息様症状、皮膚の発疹、皮膚のかゆみ、虫刺症、不正出血、肩こり、イライラ、疲れやすさ、風邪をひきやすいなど、3カ国に共通してみられた。
 病気にかかった場合、ラゴスでは、一次医療として現地医療機関を利用するよりは、むしろ大使館医務官のお世話になる例が多く、カイロやアルジェリアでは、逆に医務官ばかりでなく、現地医療機関も利用されていた。現地医療機関の利用状況は各都市によって異なるが、どっちかというとカイロの方が巾広く邦人に利用されていた。健康診断については、ラゴスおよびアルジェでは、現地医療機関はほとんど利用されていないが、カイロでは一部の病院が利用されていた。ヨーロッパあるいは日本で健康診断を受ける機会のあった者はラゴス12人、カイロ23人、アルジェ26人であった。


代表医:大利 昌久/医療サービススタッフ:サンタンブロージュ


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